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村生まれ、町育ちのパン屋さん

「毎日が、人間の都合ではなく、酵母の都合なんです。」

パン工房「わたぼうし」の店主小林真奈美さんの生活は、自然に沿ったパン作りを中心にまわっている。季節や天候に合わせてパンの仕込みと焼きの時間は異なる。天然酵母のパンは発酵に時間がかかるため、日中仕込んだ生地を翌朝早くから焼く毎日(冬場は3時頃から!)大町の厳しい冬の寒さの中で、まだ暗い夜中の作業は想像しただけで身震いしてしまうが、とびきり美味しいパンを味わえる幸せは、こんな作り手の努力があってこそなのだ。

20代後半で八坂村(現在は大町市八坂)に結婚と同時に移住。それまでは東京で校正の仕事をしていた。バブル全盛期には分厚い就職情報誌を扱った時代もあったとか。


パン作りのきっかけは新婚旅行で40日間かけて回ったヨーロッパ各地で味わった天然酵母のハード系パンの出会い。「今まで食べていたパンはなんだったのか、本当のパンとはこれか!とカルチャーショックを受けましたね。」

帰国後すぐに調べて東京の天然酵母のパン教室に志願し、満員だったところへタイミングよく空きができ、「入ります!」と即決。月一回上京し、千葉の実家に子供を預けて教室に通った。幼い頃からオーブンのある家に憧れていたという真奈美さん。当時住んでいた村営住宅の敷地内に旦那さんと一年がかりで基礎からパン製造のための作業小屋を建て、保健所の許可をなんとか取ったのがお店のはじまりだ。10年前に市内の駅前商店街に現在の店舗をオープンした。


店名の「わたぼうし」の由来は、たんぽぽの綿毛のように飛んでいってどこにでも根付き、そしてみんなとつながっていけたら、という想いから。今では大町のほか、安曇野や白馬など近隣市町村のお店や販売所、マルシェなどにもパンを納品しており、パンを気に入り焼き立てを求めに市内の店舗に足を運ぶお客さんも増えていて、少しずつその輪が広がっている。

天然酵母と国産小麦、海水塩・キビ砂糖と大町の水、地元養鶏場の卵などこだわりの素材を使ったパンは、豊かな風味で滋味深く、大地の力強さと風を運んでくれる。そして何よりも実直にパンと向き合う真奈美さんの姿勢と人柄は、混ざりけのない素朴でまっすぐなパンの佇まいに表れている。

パン工房わたぼうし

大町市下仲町2568


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